あらすじ
"太陽神イアリロに捧げるために選ばれた処女たちが
祭壇の前でいけにえになるまでの
ロシアの異教時代の太古の儀式を様々な踊りにくみあげたものである"
イアリロ(ヤリーロ)は、スラヴ神話において
春を司る神、豊穣の神として伝承されています。
4月27日は「イアリロの祭礼」が行われており
かつてはいけにえを捧げていたことが確認されていることから
春の祭典はその祭礼を表しているのではないだろうか。
初演時の衣装
出典:Wikipedia
第一部
大地への讃仰
春。大地は花で覆われている。
大地には草が茂っている。
大きな喜びが大地を満たしている。
人々は諸儀式に従って、舞踊に興じ、未来をうかがう。
あらゆる賢者の内最も高齢な者が、春の讃美へと参加する。
彼は、豊かで素晴らしい大地と一体となるために連れてこられる。
それぞれが恍惚として大地を踏みならす。
第一曲
序曲
レント、テンポルバート(遅く、自由に)
"しのびよる春の神秘さを象徴するかのような
旋律で曲は始まる"
明るさの中にも、どことなく暗く不気味な雰囲気が醸し出されている。
第三曲
誘拐の遊戯
プレスト(きわめて早く)
拍子の変化が多く、非常にせわしない。
題名の「誘拐」の通り、意志とは反して
激しく揺さぶられているような感覚になる。
低音や激しい音には
圧・強引さが感じられる。
第五曲
敵対する町の遊戯
モルト アレグロ(とても速く)
二つの旋律が"対立する二つの町"をあらわし
テンポの速さから激しさを感じる。
始めは交互に姿を見せるが
段々と交わり合っていく。
第七曲
大地への讃仰
レント(遅く)
たった4小節の静寂。
"賢人たちが大地を讃えて拝むところが
あらわされる"
第二曲
春のきざしと
テンポ ジュスト(正確な速さで)
大地を踏み鳴らすような力強いリズム。
“春の兆しをあらわそうとしている”が
そろそろ春だなぁという穏やかさはなく
全身全霊で喜んでいるような感覚である。
後に"若き原始人の女性の踊り"を
優美な旋律で奏でる。
若い男女の踊り
第四曲
春のロンド
トランクイッロ(静かに)
穏やかな旋律と気怠そうな低音の対比が
異様な空気感をあらわす。
さらに重々しさを増して静まると
最初の旋律が優しく表れる。
第六曲
賢人の行列
"原始部落で、祭式や農事のリーダーとして
尊敬されている長老や賢人の行進をあらわしている"
重々しい旋律の後、クライマックスを迎える。
第八曲
大地の踊り
プレスティッシモ(できるかぎり速く)
迫りくる3連符から始まる急速な踊り。
終始リズムが細かくせわしなく動き
全身全霊で神への敬意をあらわすように感じる。
堂々とした第一部のクライマックスである。
第二部
いけにえの祭り
日没後、夜中過ぎ。
丘の上に、聖化された石がある。
乙女たちが秘密の遊戯を始め、偉大なる道を探る。
神に捧げるよう示された乙女は、讃美され、歓呼の声で迎えられる。
尊ばれ立会人である祖先たちが招喚される。
人々のこの賢明な祖先たちは、供犠をじっと見つめている。
かくして、素晴らしく燃えるように輝くヤリロに生贄が捧げられるのだ。
第一曲
序曲
ラルゴ(幅広く、ゆったりとした)
明るさや神秘的な面が垣間見えた第一部とは
うって変わって妖しげな曲。
"大地がよびさまされ、いけにえの乙女が
もとめられなければならない"場面。
第三曲
ヴィーヴォ(活発に)
リズムも拍子も複雑に変化する。
初演の演出では、ステージの真ん中でえらばれた乙女が微動だにせず佇み、その周りを人々が
狂ったように踊る。
乙女の恐怖・不安と
人々の興奮が入り混じっている。
えらばれた乙女への讃美
第五曲
厳かな雰囲気を残しながらも
どこか間の抜けたような旋律が流れる。
しばらくして"祖先の霊への儀式の動作"に入り
リズムが細かく波を作るような音型へと変わる。
新たな旋律が"祖先の霊がいけにえの乙女を受け入れてくれるようにとの祈りが始められることを告げる"
その旋律が展開されながら勢いを増した後
冒頭の旋律が戻る。
祖先の儀式
第二曲
アンダンテ コン モート(歩くようなな速さで動きをつけて)
若者たちが集って、いけにえの乙女をえらびだす。
美しいテーマから次第に重々しい雰囲気になっていき
二度のフォルテにより
ある乙女が踊りの輪の中から外れ
最後の連打で生贄が決まる。
若者の神秘な集り
第四曲
"いけにえを祭るために、祖先の霊をよびさます"
非常に力強いテーマで、威厳のある曲である。
祖先の霊のよびさまし
第六曲
それまで微動だにしなかったいけにえの乙女が
踊り狂う、鬼気迫るフィナーレ。
"死を意味するメロディー"などが狂乱するうちに
倒れようとするいけにえの乙女を祖先が抱え
太陽神イアリロに捧げられる。
神聖な踊り、えらばれた処女